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紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所
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 地域興し(T.ホンモロコによる地域興し) 

津市美杉町は、近鉄津駅から車で1時間ほど南西方向の山間地域に入った所にあり、少子高齢化、過疎化が進みつつあります(高齢化率は三重県下トップクラス)。山間〜中山間地域であることから耕地が少なく、かつては、豊かな森林資源の利用により活気がありましたが、現在では林業が衰退し若者が生活していける産業が少なくなっています。
  一方、見方によっては、地域資源の活用によって、ビジネスチャンスが生まれる可能性があります。地域資源には、休耕地、空いた施設・建物・空き地、山林のバイオマス、豊かな水資源、経験豊かな高齢者、美しい自然等、いろいろあります。

 ところで、筆者は、若い頃から淡水魚を飼う趣味を持っていましたが、定年後に自宅で「コイ科の魚で最もおいしい」と言われているホンモロコを平成24年から飼い始めました。今年で3年目になりますが、今は美杉町の使われなくなった製材所跡の作業所で飼育しています(写真左)。現在、今年生まれた稚魚約400匹と成魚(写真右)約50匹を飼育しています(平成27年段階)。



(1)水槽でのホンモロコ飼育の難しさと技術的課題

 ホンモロコは元来、琵琶湖に棲んでいる淡水魚であり、産卵時期になると岸辺の枯れ草や水草に産卵しますが、通常は琵琶湖の上層〜中層を泳いでいるとされています。現在は、ホンモロコの漁獲量はかつては200トン程ありましたが、現在は2〜数トンと激減しており、滋賀県の水産試験場は種苗の放流を続けて漁獲量の回復をはかっています。しかし、ブラックバス等外来魚の増加、環境変化などから、回復は容易ではありません。一方、最近は、埼玉県等全国各地で地域興しを目的に飼育されつつあります。

 筆者は、津市美杉町で、水槽を用いて飼育を始めていますが、いろいろ難しさがあります。例えば、夏の暑さによる水温上昇による酸欠、氷が張るほどの冬の寒さによる凍傷害・死亡、餌のやり過ぎによるアオコの発生などの水質悪化による酸欠などにより、ホンモロコの全滅を経験しました。また、デジタル式自動給餌機の異常作動による飼料の過給餌と水質悪化による全滅も経験しました。更に、タヌキ等の獣の侵入による被害にも遭いました。現在では、これらの問題をクリアするノウハウが得られつつあると考えています。今後の課題としては、卵から孵化した仔魚はワムシを与えないと生存率がかなり低くなるので、春の産卵時期に、室内でワムシを如何に安定的に大量生産するかということです。また、餌となるミジンコの大量生産も課題です。更に、順次飼育規模の拡大を行っていきますが、500匹レベルを1,000匹レベル、更には数千匹レベルと拡大するに従って、水槽の大型化が必要であり、作業方法の変更など新たな技術的課題が生じてきます。一次産業は、一つ一つの技術的問題をアーでもないコーでもないと日々考え、工夫し、巧くいったときの喜びの機会が多いのが魅力ではないかと思っています。

(2)今後の飼育計画と販売計画
 平成27年には、成魚に対する稚魚の増殖割合が約8倍となり、平成28年には稚魚を約2000匹生産する予定でいました。しかし、4月下旬にヘルニアで急遽入院するなど、予定が狂い、結局、稚魚400匹の生産となり、平成27年並みにとどまりました。平成29年には稚魚を少なくとも1000匹台に増やしたいと週1〜2回のペースで飼育作業を行っています。今年もやはり、ワムシの増殖が間に合わない状況となっており、ホンモロコ増殖の最大のネックとなっています。当初計画では、平成29年には稚魚を約10,000匹とする予定でしたが、大幅に計画が遅れています。ネックは、ワムシの不足と、時間的に週1〜2回しか世話が出来ないことで、新鮮な産下卵の水道水による消毒と保管、孵化した仔魚へのコンスタントな給餌が出来ないことなどにより、卵及び仔魚の生存率がかなり低下しています。養殖専業となるとこれらのことが改善されると思います。平成29年には、新たに1000匹増える見込みですので、ホンモロコの料理、加工について、試行したいと考えています。販売は数千匹にまで生産量を増やしてからとなります。
 平成29年12月に今年生まれた個体数を数えたところ、目標に遠く及ばず、520匹でした。この原因を種々考えながら、来年春の準備を進めています。平成27年から29年まで、400匹〜500匹となっていて、現在の飼育システムではこの辺りが限界となっていることが分かります。やはり、最大のネックは、仔魚に豊富な生餌(ワムシ等)を絶えず給餌できていないことかと考えています。平成24年に購入した成魚がまだ生きているので、思いのほか長生きします。途中で、水槽ごとに全滅したりしているので、現有量は900匹程度飼育していることになります。(この段落:平成29年12月12日記載)

(3)地域興しへの利用
 今回ご紹介したホンモロコ飼育の特徴は、@美杉町の豊富な水を使い、水槽のみで飼育し、Aホンモロコの病気対策等に用いられる薬剤は一切使わず、トレーサビリティーを明確にした飼育法とします。B骨ごと丸ごと食べられて健康に良く、海水魚のような塩気がほとんどなく、塩分制限の方にも安心して食べられる調理法も考えたいと思っています。また、Cホンモロコ料理の試作をいろいろ行い、地元の食堂等において、地域の魅力ある料理メニューとしてホンモロコ料理も追加してもらい、観光客等に喜んでもらえるようにしたいと考えています。自分の趣味が高じて、地域興し・地域活性化の一助にでもなれば、嬉しい限りです。
(ご連絡は、 kiikankyo@gmail.com へ)                       (平成29年12月12日改訂)
 


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